会報
会報第17号―――2002年3月9日発行

ことば「上虚下実」

薛永斌

交流会

「無極静功と出会い」

星飛雄馬

「めぐりあい」

倉田哲雄

「南博先生を偲ぶ」

薛永斌


ことば

薛永斌

上虚下実[shangxuxiashi]

 太極拳と気功を行うとき、上半身と下半身の関係については、“上虚下実”というポイントがあります。上半身の姿勢と動作は柔らかく緩やかに展開していることに対し、下半身はしっかりと、いつも安定の状態を保ちつづける必要があります。人間の身体を自然界に生きて生命力溢れる樹木に例えれば、手は空間に伸びる枝葉であり、足は地面に深く下ろした根のようです。
 しかし初心者は上半身が硬く、下半身が脆くて、不安定の状態、いわゆる“上実下虚”の状態になりがちです。 “上虚下実”を達成するには、

   1. 膝を緩め、重心を安定させます。
   2. 背筋を伸ばし、肩の力を抜いて、両腕を円で繋がるようにします。
   3. 上半身と下半身のバランスをとります。

そうすれば、姿勢は自然かつ綺麗で、楽な練習も出来るようになります。

交流会

加藤信朗先生の講演 第18回交流会は昨年の11月24日午後1時半から4時45分まで杉並区セシオン会館で行われました。体育室で共同練功した後、東京都立大学名誉教授加藤信朗先生は”身体性の哲学―ねる.すわる.たつ“というテーマで講演されました。

「無極静功と出会い」

星飛雄馬さん本部土曜日初級教室
星 飛雄馬


站椿功と行歩法

 無極静功と出会って、はやくも4年の月日が経とうとしています。私がここまで楽しく無極静功を続けることができたのも、常に周囲の人々の優しい励ましがあってのことでした。

 格闘技が大好きであった私は、10代のころから、さまざまな格闘技や武術に親しんできました。しかしながら、格闘技に取り組むなかで常に疑問であったのは、練習を通して培った技術を高齢になっても使えるだろうか、ということでした。金庸などの武侠小説の世界に憧れていた私は、小説中の達人のように年をとっても強さを維持できればと思っていました。
 そんな疑問を持っていた私は、親友のH氏に相談をすることにしました。H氏は意拳を学んでおり、中国武術に明るかったため、その疑問をぶつけてみたのです。H氏は私の質問に親切に答えてくれました。彼の語るところによれば、年をとっても強さを保つためには、站椿功や行歩法をしっかりやらなければならないということでした。私は彼のアドバイスに従って、站椿功や行歩法が練功の内容の中心となっている道場を探しました。そうしてようやく、無極静功とめぐり合うことができたのです。もし、H氏の存在がなければ私は未だに無明の闇をさまよい、修行を開始することができなかったかもしれません。

素晴らしい出会い

 無極静功に入門してからも、素晴らしい出会いは続きました。多くの先輩、同輩の方々に導かれてきましたが、そのなかでもとりわけ、川上 裕之さんと大丸 敏之さんにはお世話になりました。
 川上さんは入門当初から何度も推手の指導をしてくださいました。川上さんの推手は力強いもので、その内面の強さに憧れ、少しでも近づきたいと思いながら練功に励んできました。またそのアドバイスはいつも慎重かつ丁寧なものでとても参考になるものでした。
 大丸さんにも以前から何度も推手の稽古をつけていただきました。大丸さんの推手は懐が深いもので、その練習から私は無極静功の相手を無力化し、コントロールする技術の奥の深さを体感することができました。また、練功法のことなどについて細かなアドバイスをいただき、それが今日まで大変参考になっています。

土曜の教室で

 私は昨年から、本部の土曜日の教室で稽古をさせていただいています。この教室でも、椎名 泰明さん、二瓶 克義さんとの幸運な出会いがありました。
 椎名さんは柔道の経験者で、いつもパワフルな攻めをしてきてくれます。どんどん勢いを増してくる椎名さんの攻撃をどうしのぐか考えることが、私にとっての毎週の課題になっています。二瓶さんは中国武術をはじめ、日本武道の経験もあり中途半端な攻撃では通用しない受けの強さを持っています。防御力の高い二瓶さんにどう攻撃ができるかも、私の課題になっています。

意識した練習のために

 薛先生が以前書かれた文章で、推手の練習においては、その練習の目的をはっきりと意識して練習に取り組まなければならないとありました。その意味でも、自分に克服すべき課題を与えてくれる練習相手の存在は、とてもありがたいものだと思っています。
 まだまだ書き足りない多くのありがたい出会いがありましたが、紙幅の都合でここにすべてを書き記すことはできません。それでも私の拙い経験を振り返って思うことは、武術を通じての友人との出会いは大変貴重なものであり、生涯を通じて大切にしなければならないものであるということです。友人との出会いは、求めても得られるものではなく、縁としか言いようのないものを含んでいるように感じます。そんな宝物のような関係を自分の軽率な行動で破壊してしまうことのないよう行動していかなければならないと思っています。
 そして間違うことが多く、成長の遅い私を根気強く教導してくださっている薛先生には心から感謝しております。先生や仲間とともにこれからも楽しく練功していけることを願っています。

「めぐりあい」

倉田哲雄さん大野同好会
倉田哲雄


第2の人生

 妻が長い間、心身共に不調で、本人はもとより家族も辛い時期がありました。私は三回手術を受けた経がありますので、健康の大切さは実感しています。妻が無極静功と出会い、徐々に元気になっていく姿を見守ってきました。
 私は定年二年前に、これまで仕事だけ?だった自分には、趣味と言えるものなく、第二の人生の柱となる何かを、見付けなければと思いました。そんな時、以前から妻が熱心に打ち込んでいる気功に興味を感じ、難しそうですがやってみようかと思い、毎朝出社前に十分間、十二法を順に行いました。
 定年の年の五月から、十二期の研修を受けている途中で、再就職か気功か迷いました。無極静功を少しでもわかっていくためには、気功にかける時間を多くとる必要を感じてきましたので、再就職の件は断り、気功に集中していこうと決めました。
 退職した翌朝から練功に参加、朝日も浴びて練功した時の充実感は、一生忘れることはできません。各研修の中でも、太極拳論は、文字としてはなんとなくわかるような気がしますが、実感するのはかなり難しいことです。これから実践が進むにつれて、機会あるごとに、今迄の研修等で学んだ理論を勉強していけば、徐々に実践と理論が合ってくるのではないかと思います。


推手は難しい

 月一,二回妻と小旅行へ行くのが楽しみの一つです。旅行先で推手をやることがありましたが、初めの頃で、言われていることがなかなかわからないこともあって、「ムッ」としたこともありました。推手の場合、軽く攻めたつもりでも、受け手は相当強く感じたりする場合があります。
 日常でも、自分の思い通りに相手を動かそうとか、自分の我を通そうとするのではなく、常に思いやりの心が大切だと思います。相手に欠点があっても、直させようとするのではなく、(誰でも長所、短所があります)自分が補ってあげれば、円くなるのではないでしょうか。夫婦になって30年以上もたつと、違いのある別々の人間だということを、すっかり忘れてしまいがちになります。
 二人の一日の会話は気功に関することが多く,時にはわからないこともありますが、参考となるヒントや、アドバイスを得られ助かります。理論の勉強は苦手ですが、悪い頭で頑張っています。
 12年前、ふとしたきっかけで「まんが日記」を描きましたら、妻がとても気に入ってくれ、その後楽しみにしてくれるので、私もそれが嬉しくて続けるようになりました。今では多くのファン(?)ができ、ユミュニケーションの役にたっています。


 笑いがある生活、笑える幸せを大切にしたいと思います。夫婦円満のために、力を合わせることが、大切なことだと思われます。

倉田さんの「まんが日記」から

「南博先生を偲ぶ」

薛永斌

 昨年12月17日一橋大学名誉教授南博先生が肺炎で亡くなられました。
享年87歳。
 1986年11月、来日まもない私は学習研究社に招かれ、学習研究社が組織したばかりの全日本気功協会の講師となりました。南先生は当時すでに全日本気功協会の会長でした。
 1987年5月、学習研究社が気功の事業をやめ、全日本気功協会を南先生に譲りました。全日本気功協会は当分の間、実際の活動を行う予定がなかったので、7月、私は日本気功協会の主任指導員となり、新宿区神楽坂で無極静功教室をスタートしました。
 その後、南先生は原宿の自宅兼事務所に心理学の研究と活動を行いながら全日本気功協会の活動をずっと続けておられました。
 南先生は芸術家的な風貌とちょっとお洒落な感じのする学者タイプの方ですが、人の話をじっと聞き、またご自分の意見をはっきり積極的に表現する方でもありました。特に私の印象に残るのは南先生の柔軟の考え方です。ご専門ではない気功に対しても、理解を示され、情熱を持ってその研究と普及活動を推進し、また気功の科学研究にもご関心を持っておられました。
 高齢にもかかわらず、私の要請を率直に喜んで受け入れてくださり、93年秋の無極静功第2回交流会に出席され、”気と日本人”というテーマで講演されました。
 また、94年秋、拙著”養生気功法”出版の時には、南先生のご好意によって、講演の抄録を巻末に掲載させていただきました。
 その後お会いしたことが多くなかったのですが、いつも南先生のご健康を念じておりました。
暖かく迎えていただいた素晴らしい両先生、玉城康四郎先生は99年1月に(会報11号”玉城康四郎先生を偲ぶ”)、また約三年後南博先生は亡くなり、私にとって二人の良師を失いました。
 もっと長生きして頂きたかったのですが・・・。
 南先生のご冥福を心よりお祈り申し上げます。


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