会報
会報第19号―――2003年4月1日発行

ことば「立身中正」

薛永斌

交流会

「無極静功を体験して」

松沢 修

「無極静功を活かす」

土方直樹


ことば

薛永斌

立身中正

 太極拳と気功の姿勢に対し、“立身中正”という共通のポイントがあります。
 自然界の樹木では、幹はちゃんと上へ向かって伸び、根は地面に下ろし、枝葉は空間に広がります。
 太極拳と気功を練習する時、樹木と同じように、背筋を伸ばし、頭の上に軽い風船を乗せている感じで(“頭頂要軽”というポイント)、足と繋がると動きの軸が形成され、そして両手を展ばして、動作を展開します。
 “立身中正”はしっかりとした、綺麗で、余裕がある体の軸の感じです。健康にだけでなく、武術でもその体の軸の感じが大切です。

交流会

 

 第20回交流会は2002年11月2日(土)午後、新宿スポーツセンターで開催されました。東京工業大学名誉教授武者利光先生が”生体リズムのゆらぎと快適性”を講演されました。

東京工業大学武者利光名誉教授の講演

 秋合宿(川崎市民プラザ 2002年11月4日)

合宿の楽しさは、交流の楽しさにもあります。とくに推手の練習は、和気あいあいと、そして真剣にお互いの技を確かめ合います。やわらかさを活かせば、女性が男性を負かすことだって・・・。

「無極静功を体験して」

松沢 修さん横浜片倉教室 初段
松沢 修



 六年前、私は運動不足と体重増が気に掛かり、スポーツクラブに通い始めました。基本的にエアロビクスが苦手な私は、比較的親しみ易そうな気功に興味を持ちました。
 学生時代空手を経験し、他の武術をいろいろ調べてみたところ太極拳は極めて強い格闘技であること、又、養生法でも優れた効果を期待することができ、それは陰陽の理と円運動を兼ね備えているからだという強い印象が私の中に残っていました。
 無極静功を初めて体験したとき、飯塚先生の滑らかでいてなお且つ、繋がりのある円の動きが以前から私の描いていた太極拳のイメージによく似ているように思えました。その時学生時代の想いが蘇えり、円への好奇心を抱きました。
 無極静功を経験し、二年目で私は研修会に参加させて頂きました。その中で二十四要を学んだ際、鼻先、腕、肘、両股、虎口(親指と人差し指の股)まであらゆる所が円で繋がれていなければならないことや、イメージで円を意識すると自然に姿勢が調整され、動作がスムーズになるということを改めて学びました。
 円は身体の構造上無理がなく安定感があり、合理的で強く、自然の流れを持っています。武術として太極拳が優れているのはこの特徴があるからだと思います。
 このような円の動き、そして緩やかな自然の調和を体感する気功や太極拳の練習に慣れてくると、無理のない心身の用法が身につき、不自然な感情や身体の姿勢を避ける習慣がつくと聞きます。この事は武術面だけで無く人生においても素晴らしい効果を及ぼすと私は信じています。

套路

 太極拳は武術の一つなので、套路の一つ一つに具体的な用法があります。その中には人を制する危険な技が含まれていることを段階において知る必要があるように思います。
 用法を理解すれば正確な動作が身に付き、実戦においても瞬間的に的確な反応をすることが可能になるはずです。正しい用法を身につけると、人との格闘だけでなく事故に遭遇しそうになった時にも、用法の一部分が自分を守ってくれることに繋がると思っています。
 土曜教室に体験入門した時、薛先生に二十四式の用法を教えて頂き、自分の描いていた技の動きと微妙に違いがあることが分かりました。軌跡を正確に辿る為に非常に勉強になり、その後も土曜教室に通い続けています。
 套路練習では技の理解をするという事だけでなく、意識の力で自然に身体を導くようにすることも学びました。「用意不用力」で表わされるように、全ての動作は力を用いるのではなく意(意念)を用いなければなりません。

推手

 推手はゲーム感覚で楽しめたり、時には危険を感じながら交わったり、その時に応じて多種多様な場面があり、私の大好きな練習の一つです。
 推手には、いろいろな想い出があります。樹林練功会で先輩に単推手をお願いした時、私が右手で攻めた瞬間、雲手で受けられ右手薬指第一関節の腱を切り、指が曲ったままの状態になりました。関節があるというのに何故このような事が起こるのか疑問に思い、医師に尋ねたところ、瞬間的な衝撃があると腱が切れてしまうとのこと。確かにあの時、内面的な強さから来る衝撃を感じ、発勁の威力を身体に受けたような気がします。暫くギブス生活になってしまいましたが、貴重な経験をさせてもらいました。
 三年前、推手の他流試合に出るために、火曜中級教室終了後に強化練習をさせて頂いた事がありました。試合形式で推手を行い、勝った者が残り負けた者が次の人に代わるというルールの練習でした。男性数人で一時間半位続けられ私は、体力と気力の限界を感じ倒れそうになった事を今でも覚えています。意識もうろうの中かすかに薛先生の「疲れた時に技がでます。」という声が聞こえ、薛先生の武術に対する厳しい姿勢に深く感銘しました。その時を境に自分の推手の形が変わったように思います。というのは、単にエネルギーを使うのではなく、力を入れなくて済む形を求めるようになったように思えます。正しい形は一つしかありません。しかし無限の形が存在します。“一動無不動 一静無不静”どこか身体の一箇所が動けば全身動かぬ所がなく、一箇所静止すれば全身静止せぬ所がないように、小さな動きでも全身を微妙に変化させます。
 これからも無極静功の教えの通り、外三合や内三合で繋がりを持つようにし、八法をバランス良く運用し、“訣”を意識して、気と形をコントロールするよう心掛けたいです。

終わりに

 無極静功の教室は、長期的なカリキュラムが組まれています。教室だけの練功ではなく研修会で理論の勉強をしたり、合宿で高度な技を練習したり、交流会や樹林練功会等で他の教室の方々と交流を深めたりもします。まだまだ覚えたいことがたくさんありますが、焦らず一歩一歩進めて行くつもりです。薛先生を始め指導員の方々にはいつも優しくご指導頂き深く感謝しています。

「無極静功を活かす」

土方直樹さん本部火曜夜教室
土方 直樹

 現在本部中級クラスに通っていますが、その中で感じたことを中心に書いてみたいと思います。

推手

 初級クラスから中級クラスに移ると毎回推手をする時間があります。初めは、推手をしても、すぐにバランスを崩したり、自分が力を出していても通用しなかったりして、面白くない時期が続きました。
 練習中に、先輩方にアドバイスを頂いたり、頭の中で、こうした方がいいかもしれないとか考えたりすることがしばらく続きました。そうしている内に、いつからかはわからないですが、自分の姿勢や動作とバランスの関係がある程度認識しやすくなってきました。そうすると推手の時も、ある程度バランスを保っていられるようになってきました。
 また、自分とはレベルの違う話ですが、以前薛先生が写真を見て、動作が充分ないとか、つながっていないとか言われるのを何度か聞く機会がありました。その時は、写真だけでどこからそんなことがわかるのか不思議でした。
 しかし今は、つながっているかどうかの判断はできないですが(自分がつながっていないので)、余裕のある動作か、そうでないかはすこしではありますが、みていてわかるように思います。結局、充分にわかっているから他をみても細かい所までわかるようになるのだと思います。

太極拳

 また、24式や108式をしている時も、動作に慣れてきてスムーズに動けるようになるのも進歩の1つと思いますが、推手でバランス感覚を意識するようになってからは、動作1つ1つにも推手と同じようなバランス感覚がないとダメではないかと思えてきました。
 そして、これは自分の今後の課題の1つなのですが、24式や108式は、太極拳の用法の理解を伴った感覚でないて、ある程度のバランスはとれた形になっていたとしても、太極拳本来の動きには近づけないのではと思われます。

中心

 私は、鍼灸の仕事をしていますが、以前(初級クラスの時)薛先生が「相手の中心がわかってきて、捕えられるようになってくると、鍼の場合は、どの方向に鍼をもっていくのが良いのか、わかってくる」という意味の事を言われていました。
 鍼の場合、刺入する場所の選定がまずありますが、その次に鍼をどこにもっていくか(角度、深さなど)が重要になってきます。弓の的を反応点(ツボ)と置き換えた場合、ある程度慣れてくれば、的の円の中には、鍼先をもっていけるでしょうが、的の真中に百発百中でとれると簡単なことではありません。
 反応が出ている所(範囲)なら、どこを刺入しても効く場合もありますが、そこを外すと効果がないという場合もあります。人体内部は、表面からみえる世界ではないので、鍼の操作には視覚だけに頼まれない微妙な感覚が必要となります。
 例えば推手で相手のちょっとした隙も見逃さずに中心をねらうことができるような感覚レベルに達すると治療にも、色々と応用できるようになると思います。
 自分の仕事を例に出して、簡単に説明しましたが、他の分野の活動、仕事にも工夫の多少はあると思いますが、無極静功を活かすことができると思います。
 まだ、自分は足りない面が多いので、今後充足して進歩していきたいと思います。


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