研究レポート

立身中正について

大村雅枝

大村雅枝さん;無極静功を始めてから11年余りになります。始めてから3年程たって研修会に参加し「形」「意」「気」の協調とバランスが基本であり、これは「形が正しくなければ、気は順調に流れない。気が順調に流れなければ、意識は安定しない。」ということで、まず形を調えることが基礎であることを学びました。

この研修会で、先生から姿勢を直されたことがありました。自分では真っ直に背骨を伸ばしていたつもりが、実際は背中が丸く腰も前屈みになっていたのです。そして背中を伸ばしてみて驚いたのは、それまで練功の時いつも背中の少し上の処に鈍い痛みと、何かにつかえているような感じのあったのが、スーと背骨に沿って上に流れて消えてしまったことです。そして気分も清々としたように感じました。姿勢を少し変えただけで身体の感じがこんなに違うものかということを実感し、「形が正しくなければ、気は順調に流れない。」というのはこのことだと思いました。そして背骨の部分を伸ばしたことによってそれまで曲がりなりにもとってきた身体の他の部分とのバランスが崩れてしまい、また姿勢全体の新たなバランスを求めなければなりませんでした。

上記の体験から背骨を伸ばすことを手がかりに、形を考える上で要となる立身中正ということについて、その意味するところは何か、それはどのようにして求めるのか、姿勢のポイントに従いながら、自分なりに理解するところを述べてみたいと思います。

1:腰を落とし、背骨を伸ばす。

☆一番重要なのは腰を落とすことです。腰が緩まないと背骨も伸びません。そのためにはまず尾てい骨を踵に向けて下ろすようにイメージします。こうしていると尾てい骨の先端にある長強というツボのあたりがむずむずしてきて、やがてその感じは腰椎の上のあたりまで上がってくるのが感じられるようになります。

☆腰を緩めます。それには腰椎のカーブを背側の方に少し引き出すようにします。言い替えると、前に傾斜している腰椎を少し立てるような感じするのですが、これは極く僅かで、やり過ぎないよう、力が入らないよう注意が必要です。そうすると腰の力が抜けて下に落ちると思います。

☆背骨を伸ばす。力を入れて伸ばすのではなく、やわらかく力を抜いて、"百会"穴に向かって伸びるようにイメージします。

☆:そして"百会"穴を上から吊るすようにイメージします。こうすると吊り下がった身体の重みで腰から下は沈むような感じになり、腰から上は背骨が上に引かれて伸びる気持になると思います。それと共に、首の後ろが上に伸び、自然に顎が引かれ、私の場合、目尻と耳の穴を結ぶ線が床と平行になる位にすると、首が前に曲がりすぎることを防ぎ、首筋が真っ直に上に伸びる感じがすると思います。


表演-托天昇陽法より以上のようにして全体のバランスをはかりながら立っていると、腰椎から胸椎、頚椎へと椎骨の一つ一つが下から段々と上に伸びて来るように感じられます。喩えてみると、水が切れてうなだれた花に水をたっぷりと与えると、水を吸い揚げた茎は、しなやかに、張りを持ってすっと上に伸び、それは葉先や花にも達し、全体が生き生きとなる。そんな感じで背骨が伸びるように感じます。

2:両腕を弧にする。

☆。このように背骨が伸びるとそれに従って肩もゆるみ、両手の指先を合わせる様に意識すると、背骨を中心に両側に広がり背中が広くなったように感じます。両腕も背中から弧線となって伸びる感じになり、それは手の指先まで達し、伸びた腕は外へ外へと広がろうとする気が感じられるようになります。その外への動きと、それを少し内側にまとめようとする意識が丁度良く会ったとき、両手、両腕の間は指先が空間で繋がり、背中から繋がった円となり、円の内側は気で充満するように感じられます。

3:足は確りと安定する。

☆下半身が確りしなければ上体を支えられず、身体全体も安定しません。足の裏は平らに、両大腿の内側は少し開くように意識していると、脚も手と同じような感じで、腰から両腿にかけて弧線となる感じでお尻から腿にかけて外に広がっていくような感じになり、それを両膝をあわせる意識でコントロールしていくと両大腿の間は気で充満した円が感じられるように思います。このなったとき、下半身は確りと安定した感じが得られると思います。


表演-左右展翅より以上の三点が,立身中世の要件と言えるのではないかと思います。脚が確りとしなければ背骨も伸びないし背骨が伸びなければ気も手に達しない。この三つが互いに影響しあいバランスよく一つになったとき、上半身と下半身が確かに腰で繋がっているように感じられます。どのような姿勢であっても、このように上下が腰で繋がって、背骨が伸び、両肱が円となり、下半身が安定している。そうすれば身体は腰を軸にして自由にしかも確りと安定した姿勢を崩さずに動くことが出来る。このことが立身中正という言葉の意味するところではないかと思います。まだまだわかったつもりでいるだけでこれからも自分の間違いに気付くこと多いと思いますし、これからもっと細かいところにも注意を向け、形、意、気の統一を目指していっそうの精進を続けたいと思っています。

2000年9月3日


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