研究レポート

勁(2)

稲葉多香子

稲葉多香子さん;

勁は気のパワーと筋肉のパワーとの結合である。勁は気を基にして、意を用いて形を調える鍛錬があって生み出される。即ち意、気形を基にし用いられる。勁には剛柔が含まれる。

剛は僵(こわばった力)ではなく、柔は(ぐにゃぐにゃ)ではなく弾力がある。

剛は陽であり実、柔は陰であり虚、剛の中には柔があり、柔の中には剛がある、その陰陽、虚実が相済(バランスよく調和)され、内部とつながり外は柔らかい。

動きがあると全身総てが軽くスムーズで余裕があり、勁でつながり、ばらばらではない、気を充満させ、意識は内面に収斂させる。 勁は欠けたところがない様に、断続のところがない様に、その根は脚に在り、腿に達し、腰が主宰し、手の指に達する。

姿勢においては気を丹田に(気沈丹田)、頭を上に引っ張りあげられ頭上懸にし(虚領頂勁)、背骨を伸ばす(中身中正)、足は根が生えたように安定させる(足は第2の主宰)、全身を調和させる(上虚下実)、動きは常にリラックスした状態で(放松)、腰を軸とし(腰は第一の主宰)、滑らかに転換させ、意静のもと勁を空間に伸ばし、形を伸びやかに発展させ、勁を断つ事なく意で導き、中心と円を意識して弾力がある、一つの動作には虚実があり、はっきりと分け(虚実分清)バランスを取る事により、動きは軽やかとなる。

無極静功十二法は当然の事ながら、今まで述べた事柄が総て含まれていると思います。

より緻密に練功するならば勁はより柔となり剛も変わってくるのではないかと思います。

それにより虚実の変化は限りなく、心の欲する所に従うのではないかと思います。勁の働きを理解し運用することが出来れば、推手を行うときの体の状態、意識の使い方等も少しは進歩するのではないかと思いました。 以上は前回のレポートで、王、武両氏の「太極拳論」を学び、指導員研修会での薛先生の講義内容を私なりにまとめたものです。

私が何故勁に興味を持ち、はっきりとした概念を把握したかったのか、それは推手を行う時、力の強い相手に対し力で対抗してはいけない(不頂)そして逃げない(不去)、剛の力に対して柔で受ける、それが太極拳の武術の特徴で力の無い者でも負けない。

しかし実際には力の強い相手には崩されてしまう、それにはどうしたら良いか、勁を強くしたい、そして自分を守るにはどの様にするか、薛先生は相手の力を受け止めて余裕を持って相手の力を利用して、自分の有利な状態に導いて相手の中心を攻めていく様にと、それには先ず自分の太極態を保つようにと言われる。それで私は基礎となる自分の姿勢を検証することに努め、推手は勿論の事、養生十二法、太極二十四式を行う時、自分を客観的に観察することから始めた。

表演-表演-

即ち、気沈丹田、虚領頂勁、中身中正、上虚下実、内実外虚のもと放松した状態で腰を滑らかに転換させ、意静のもと中心をはっきり意識して円があり内部とつながっているか、虚実分清が出来てバランスはと言った事柄です。でも力の強い相手には姿勢のバランスが崩れるのが分る、何か足りない、そしてふと気付いた事が「形の調整の中心は中丹田にあり、ここを開くと姿勢がのびのびとし栄気が自然と全身へと流れます」と薛先生が書かれた「養生気功法」の一節です。

中丹田を開くことにより形はしっかりとし勢と円が保たれる様に感じられた。

推手は放松して相手と調和させる。

軽く接触し(沾)つながり(連)ねばっこく(粘)つき従う(随勁)、柔軟性をもって無理な抵抗をしない、相手の勁の方向、強さ、重心を聴き(聴勁)、流れの方向をコントロールする(化勁)、相手の良い形を崩す(拿勁)。

この一連の動きの中で本当に放松が出来ているか、技をかけられても放松して対応しているか、その上で反撃することが出来るかが今後の私の課題です。

太極拳の武術の技である化勁の主なものには抽絲勁、螺旋勁、纏絲勁がある。

抽絲勁は蚕の糸の様に伸ばす。方向は決まっていない。楊式太極拳の主な勁。

螺旋勁は八卦掌とか陳式太極拳の主な勁でこの二つの勁が合わさったのが纏絲勁。

薛先生の抽絲勁、螺旋勁の説明と動作で、その違いと勁は見て理解できる。しかし纏絲勁は見えず全く分らない。ただその凄さだけが分る。無極静功はこの勁を目指していると。

こういった勁の技をマスターするならば四両で千斤をはじく事が出来るのでしょう。

道のりは遥か遠いけれど良い師、良い仲間に恵まれている幸せを思い少しづつ進歩出来ればと願っております。


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