研究レポート

涵胸抜背

持田美智子

持田美智子さん;

武禹襄の身法八要の中の"涵胸""抜背"は太極拳を正しく実践するための姿勢のあり方を、陰、陽、動、静の関係を理解した上で把握することの大切さを説いたものです。

最近の指導員研修会で、薛先生の動作を加えての詳しい説明で、この四文字が更に含蓄のあるものとして印象に残りました。

"涵胸"はどんな動作のときも、胸を張って緊張してはいけないことを教えています。両肩を柔らかく合わせ、玉堂穴(中穴の少し上)辺りは、両側に開く感じで、ゆったりとした形、ここまでは気功の三原則の調身、調心、調息の中の調身に含まれる形だと思いますが、"涵胸"は更に形だけでなく、内面的なもの、寛大な精神をも含めた余裕のあるのびのびとした空間を作り出すことが含まれています。

"抜背"は背筋を上下に伸ばし、頭と尾骨との"上下一線"になり;両腕を左右開き、空間を形成させます。

"牽動往来気貼背"

太極24式をする持田さん何かの動作をする時には、気は背にあり、背骨に収斂していなければならないということです。

"万病は背より生ず"と言いますから、抜背は健康のために、大変重要な要素である事は確かです。

涵胸を正しく実践すれば、抜背もやり易くなり;抜背を丁寧に実行すれば、涵胸も楽に確認できる。つまり"涵胸"と"抜背"は表裏一体のものとして理解しています。

「気功法の中の"大転環"で右手と左手は、常につながって抜背となる。背中は硬くならず、常に調整できるように」

これは研修会での先生の講義の一部ですが以来、"大転環"の味わいが深いものになってきました。

"大転環" 両足は肩幅よりやや広くして、しっかりと立ち、両腕は腰で繋がって、一つの手のような感覚、腰を中心に、ゆっくりと大きく転環させます。涵胸抜背を保つことで、両手は確実に気でつながり、やがて球状の気場の中で、柔らかく、大きく転環しているような状態になります。

生来の胸を張ったような姿勢のため、常に背中(殊に、肩甲骨の間あたり)に、圧迫感があった私は、この大転環が最初から好きだったのは私の体にとって必要な気功法の動作であったためと今になって納得できます。

太極拳の套路練習では、先ず、涵胸抜背で姿勢を整えて、静立養気法(予備式)で立ちます。ゆっくりと動作に入りますが、終始一貫して涵胸抜背を保ちつづけることは無理のようです。忘れてはいけないと思いますが、套路練習で大切なのは、腰からの円運動で、気と勁の感覚でゆっくりと進めて行くことです。

太極拳の練習でも涵胸抜背は単に形に対する要求だけでなく、体の内面的な状態、意と気と勁に対する要求が大きく関わっていることがわかりました。

推手の練習では、相手と手首を合わせた瞬間に相手の情報が伝わってきます。

肩に力の入っている人、強い力で攻めてくるのが予知できます。落ち着いて涵胸抜背で相手の力を一応受けとめて腰からの動きで、中心線から外し方向を変えてしまうと頭で考えていますとできそうですが、力強い相手と対峙した場合、簡単にはできません。 いつの日か、"小よく大を制す"ことが出来るようになりたいです。

結局、気功法も、太極拳の套路も、太極拳の推手も、涵胸抜背を忘れずに、正しい練習法に従って続けていくことが上達につながり、健康のために大きく役に立つと思っています。

又、日常生活に涵胸抜背が自然に身についたとき、当然の事ながら体のために良いばかりでなく、人間関係も円滑に保たれることでしょう。

"涵胸抜背"は生きるための身体的な姿勢だけでなく、精神的な心構えとしても大切にしたいと考えています。

太極24式をする持田さん

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