会報
会報第20号―――2003年11月25日発行

ことば「半眼」

薛永斌

交流活動

「無極静功の精神的豊かさ」

伊藤由美子

「噴水池の畔」

石塚要


ことば

薛永斌

半眼

 無極静功の静というのは、意静という意味です。
意静ができてからはじめて形と気の調整は行なうことが可能になります。
 意静を達成するには、まず瞼を緩め、意識を外面から内面へ、体の全体へ纏めます。
 その状態の眼の形を通常の開眼・閉眼とは区別して、半眼と言います。
気功を行なうときは、常に半眼で安静状態を保つことが必要です。
 また、目を半眼にするということは、意識の範囲と気の範囲を一致させるためでもあります。
形の幅が小さなポーズは、目を開ける幅は小さく、逆に、形の幅が大きいほど、眼を開ける幅も大きくなります。
 半眼を適切に行なうことができれば,体全体のバランスを保つことができます。
姿勢の視点から、これを“半眼正視”と言います。

交流活動

樹林練功会
 日曜日の午前10時から11時まで、代々木公園中央広場噴水池付近の 樹林にて養生十二法と太極24式を練習します。
 今後の予定は、2004年の4月4日(第96回)、6月6日、7月4日、 9月19日、11月21日です。無料、自由参加。雨天中止。

合宿
 今年の秋の合宿は11月2日(日)の午後から3日(月)の正午にかけ、川崎 市民プラザで行なわれました。

定歩太極24式
 
搨手(ターシュ)の練習

  来年の春の合宿は4月10日(土)〜11日(日)に、埼玉県嵐山町にある国立 女性教育センターで行なう予定です。桜の花の一番綺麗な時期です。初心者の方もご参加ください。

交流会
 第21回交流会は2004年5月22日(土)正午12時から午後4時30分まで、世田谷区北沢タウンホールで行われる予定です。
 3年ぶり3回目の教室別表演会となります。皆様のご活躍を楽しみにしております。

「無極静功の精神的豊かさ」

伊藤由美子さん東京都小平市
伊藤 由美子


無極静功で得た健康

 気功との最初の出会いは十五年程前になります。その頃義母がミシン刺繍研究所を新宿で開いておりまして、同居していた十数年間一日五時間位昼夜ミシン刺繍をする毎日でした。長時間同じ姿勢で細かい作業をするので、ジャズ体操を習い身体をほぐしていましたが、その先生が太極拳の良さを時々話されるのを聞き、年取っても続けられそうな優雅でゆったりした動きの太極拳に次第に 関心を持ちました。
 その後、公民館と武道館で週二回何種類か太極拳を習い、段々面白く興味も出てきて、週三回に増やそうと思った矢先、内耳に炎症を起こし、家で塞ぎ込む日々が続くことになりました。
 その頃は気功ブームで、テレビで連日の様に、気功の特異効能が取り上げられていました。
 ある太極拳の先輩の紹介で赤尾さんに連れられて吉祥寺教室に伺いました。初対面の薛先生はきびしい印象で、その時に「気功を教室で学んで自分で治し、精神的に強くなりなさい」とおっしゃいました。最初の二、三ヶ月は站椿功から始まる十二法を三十分以上じっと立っていることで足が疲れて大変でした。しかし優しい先輩達の励ましを感じなから、今私にできることはこれしか無いと考えました。
 家に帰ってもテキストを片手に二十四式を復習する日々が続きました。半年程過ぎますと、徐々に身体も慣れ、以前の太極拳教室にも戻り、無極静功の小平同好会にもお世話になる様になりました。現在は曜日が重なり、明大前教室にだけ伺っております。当初の厳しいと思われた「精神的に強くなって自分で治しなさい」という言葉はいまでも耳と心に残って響いております。元来怠け者の私が十余年間、気功を続けてこられましたのは、薛先生や先輩方が温かく励まし、支えて下さったお蔭と深く感謝いたしております。

リラックス、癒し、ストレス解消、自然治癒の効果

 気功を始めて数年して、合宿での樹林気功の練功中、足元に猫が来てリラックスした様子で寝ころんでしまいました。あの時は站椿功の最中指先にトンボや虫が止まってしばらく動かず、困惑してしまうこともあります。気功教室の帰りによその犬や猫を撫でていると気持ちを良さそうに横になることもあります。気功練功によって得られる心身の快適さは、癒し効果となって犬や猫の動物にも伝われる様です。動物でさえそうなのですから、心配事等が次々と押し寄せてくる人間にも、気功にはストレス解消の効果があると確信いたしております。
 気功によって得られる自然治癒の効果は、人間が本来もっているもので、普段は自覚されないでしょうが、気功に触れた方には様々の体験となって現れると思います。
 私の場合、子育て中に痛めた長年の膝の痛みが和らぎました。顎関節のずれが、練功中に自然に修整しようとしていることにも気付きました。

自然界や人間界の中での気功

 樹林気功中に個体としての枠が無くなり、まわりの植物や空と同化し融合する気分になることがあります。気功練功中でしか味わえない一種独得の至福のひとときです。その時は、無我の解放された時間、空間を感じます。
 幼い頃自然豊かな地で育ったことは幸せでした。今では美しい自然を求めて旅行するのが楽しみの一つです。
 一人旅では初対面の人と隣同士になることがありますが、何気無くお話ができるようになったのも気功のお蔭です。以前は駅の人込みにも気疲れしましたが、精神的、肉体的に疲れなくなったのは、気功・太極拳推手の効用によるものと思います。
 相手と自分との間に違和感を生じることなく、同空間で共存して、融け込み、境界線が無く渾然一体となる感覚の気功や推手のお陰と思います。

自然呼吸という宝物

 ある時、バスの中で前席の中年女性が肩を大きく上下させて呼吸しているのに気付きました。自分の肩は、と見ると肩が動くかわりに、お腹が動いていました。気功を習っているうちに、自然で楽な腹式呼吸ができるようになっていました。自分のペースでゆっくり腹式呼吸をしているので、行動しつつも休息をとっている感じです。
 若い頃より体力は落ちていますが、自己コントロールした持久力が備わってきているようです。外出して遅くなっても、億劫に思わず少しでも練功することによって、睡眠は深くなり朝の目覚めは爽やかとなります。
 ひ弱な私でさえ自然腹式呼吸が身に付いている事は、無極静功を通じて得られた、目には見えない、形にも表われない貴重な宝物です。無極静功の簡素でありなから奥深い功法は、誰にでも、いつでも、何処でも 練功できます。この容易さが無極静功の魅力です。
 困難な時期に様々な人を介して、神様が「わら」を投げて下さったように思われる気功。人生には、その時は廻り道のように思われても、無駄な事や無駄な時間は無かったのでしょう。
 無極静功の精神的豊かさを生かしつつ、身体、精神、心のバランスを取って、無事に楽しくこれから人生を歩んでゆきたいと祈っております。
 薛先生を始め皆様よろしくご指導をお願いいたします。拙い文章をお読み下さいまして有難うございました。

「噴水池の畔

石塚要さん埼玉県さいたま市
石塚 要

小さな教訓

 夏が過ぎて透明感の増した青空に白い雲が浮かんでいた。さいたま市民会館の『浦和気功を楽しむ会』を訪ねたのは、7年前の秋のことである。富岡先生主宰の教室は養生十二法と太極二十四式が中心だった。
 3年が過ぎた夏のこと、練功中の私に意外なことが起こった。養生十二法の站?功がスタートして、両手を胸の前に上げていった。その時、左手が肘から指先にかけて、突然震え始めた。 初めての体験だった。
 次の週から、教室の始まる30分前に行き、三円式を自主練功した。まだ先生も見えていない教室で、心を静めながら、両手を徐徐に胸の高さに上げた。異常は無かった。今日は大丈夫、と思った。
 定刻前に富岡先生や生徒の皆さんも来られて「お早う」の挨拶で站椿功が始まる。三円式に移ろうとした。不安はなかった。しかしその時、電気にでも打たれたように、左手が痙攣し始めた。自発動功?私はパニックになった。
 自宅で練功しているときには、一度もこんな症状は出ない。数ヶ月過ぎても教室でのこの症状は続いた。なぜ教室で複数の人とやると、自発動功の症状が出るのか、疑問だった。
 ホーム・ドクターに聞いた。気功の経験があるというドクターは口を開いた。「あなたは構え過ぎるからネ、力まず自然態でやってみなさい」と諭すように言った。
 富岡先生は言った「気にしなくても大丈夫よ、初歩のレベルからワン・ステップ上がるときそういうことがあるヨ」そう信じたい。
 薛先生も述べておられるが「自発動功は抑制されている脳の一定の部位の、自律性解放の現象で、病気の改善につながる。気のバランスを取るようにすると、抑制部位の回復によって、やがて自発的動きも沈静化する」という。その言葉通りに、しばらくして症状は消えた。
 この体験を私の小さな教訓にしたい。

噴水池の畔

 若者で賑わう原宿駅を降りて、明治神宮の参道に通じる神宮橋を渡り、歩道を道なりに右にカーブをとると、代代木公園の原宿門に出る。ここが『無極静功樹林練功会』の会場になっている。原宿門を入って間もなく、鬱蒼とした常緑樹の群落を通して、遥か向こうに噴水池が見え、水しぶきを上げている。その池の畔には、色取りどりの薔薇が咲き、路傍の可憐な野草の姿がいとおしい。
 緑の多い場所や滝之あるところに行くと、気分が爽快になる。緑が私達の体調に良い影響をもたらすのは、マイナスイオンが豊富にあるからだ。
 人間を含めた動物と植物とは、呼吸が逆の循環になっていて、互いの生命活動を補い合う。動物は酸素を吸って二酸化炭素を吐き出すし、植物は太陽と二酸化炭素によって、光合成を行い、酸素を排出する。植物は根から吸った水分をゆっくり周囲に蒸散させ、マイナスイオンを発散する。
 癒しの波動を受けながら、マイナスイオンに包まれて行う樹林気功にはまた、格別な爽快さがある。
 『無極静功樹林練功会』には、毎回50名を超える会員が参加し、友好を深めながら、練功を楽しんでいる。

無極静功遥かなり

  本部初級教室ひの入門は4年前のことだった。入門初日の7月3日は、稲葉先生の担当で、養生十二法と太極二十四式のほか、太極拳推手があった。推手は初めての体験だった。稲葉先生から実技指導を受ける静かな教室の中で、何故か私一人だけが緊張していた。
 第二週目の担当は薛先生だった。太極二十四式が終わると、理論の講義に入り、17番の倒捻肱の講義だった。基本功と用法の説明があり、興味深い講義だった。続いての実技は定歩単推手、次に活歩単推手。薛先生は鮮やかに活歩の攻める守るの套路を踏んで見せ「はいスタート!」と言った。私はリズムに乗れず足がもつれた。
 今年の9月の教室だった。搨手の内纏に移り、二人が力くらべの形でもつれ合い、私はバランスを崩した。その時「技を使いなさい!」薛先生の大きな声が飛んだ。
 太極拳は武術の一種として、また健康法として、三百五十年の昔から、その役割を果たしてきた拳法である。太極拳はさまざまな拳法を踏まえて「実を避けて虚をつき、柔を以て剛を制す。彼が動かざれば己も動かず、彼が微動すればその先を行く、回転する円の動きを以て、直接的な攻めに打ち克つ」という化勁を使う極めて合理的な拳法だ。
 太極拳は、三千年以上の歴史を持つ気功と共に、中国文化そのものだった。その技の一つ一つを辿る私の、無極静功の道は遠い。


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