相模原教室
森 美恵子
前にいる相手をねらい、そのまま180度後ろの相手に向き直り、相手の膝をはらいながら回り込み、その勢いで相手の剣を上に持ちあげてしまう。イメージは膨らみ、套路が頭の中を駆け巡る...。
昨年の4月から、太極拳に通じ、護身のために役立つ武術として、明大前本部道場で剣研修会が始まりました。
私は、太極拳を練習するようになって、太極剣を知りました。剣法は長い歴史の上に、綿々と伝えられ守られてきた奥の深い術です。門派により多少の違いはあるものの、華やかな表演(試合用)の動きに魅せられ、いつかはやってみたいと思っていました。
剣は手の延長
教室では、無極静功の剣は実用性と動きの美しさのバランスを求めるようにと、先生は必ず用法を見せながら動き(套路)を、教えて下さいます。技をイメージしながら軽やかに動くように、そして、剣が手の延長のように自分のパワーが剣先に届くようにと、要訣を一つ一つご指導下さいます。
月1回の練習は、武器(剣)を持つことで姿勢がよくなり、思わず張り切って、非日常的な大きな動きに、にこにことみな楽しそうです。そして活き活きしています。
剣四八式の中前後穿剣では、相手に自分の剣の動きが分からないように、体の部位(手や足の近く)に隠しておき(蓄勁)、その勢いで相手の隙をついて刺します。
身剣合一のバランス
始めはぎこちない動きで套路を覚えるのに一生懸命でした。くり返すうちにだんだんと自分のパワーが剣の先に届くような、集中力のある素早い動きが出来るようになります。激しい動きやゆっくりとした動きが自然にきまると気持ちがいいものです。
虚領頂勁、含胸抜背、沈肩墜肘、掖胯斂臀の姿勢は太極拳と同じように要求されます。身、手、歩法の成熟された動きは、腰を主宰にして、身剣合一のバランスが大事になります。
四両千斤を撥く、柔より鋼を制するといわれる太極拳の時も、推手を学んで太極拳の動きが理解できたように、太極拳の動きがあって、より太極剣が理解できました。
しかし、太極剣は視覚で相手を観察する点も重要とされると思いました。太極拳は聴勁で相手を知ってから、化勁しても遅くはないけれど、「人不知我、我独知人」で、剣はより早く、その変化を感じて、まっすぐ相手を刺す武器術だと思います。
剣には、直線にのびる鋭さがあります。闘いにおいては、相手の武器を受け止めても、確実に剣の正しい型(使い方)を理解しなければ、一瞬で命を落とすかもしれません。まだ剣身の両面に鋭い刃のある剣は、相手と対する前に己を傷けてしまう難しさも知らなければなりません。常に相手の身、眼、手、歩そして動き(剣)を意識して、その変化に対応するように練習をしなければ、体の使い方の技は身につかないと思います。
現実に多様な武器を利用して自分を守れる点では、腕力のない女性の護身に最適なのです。
剣指の妙味
初めて剣を手にしたとき、その重さが微妙に感じられました。でも左右のバランスを取ったり、剣の動きと調和するように、左手で剣指(剣訣ともいう)をつくります。動作に合わせて、横に伸ばしたり、頭の斜めにあげたり、剣を持った右手に添えて体のバランスを整えます。そして、その剣指には、相手を惑わせたり、時には相手の点穴を突く意味もあることを聞いたときは驚きました。宮本武蔵の二刀流のように、動きの一つ一つに激しい兵器として実用されているからです。
まずは套路練習です。正しい動きから、バランスを確認しながらの練習が大事です。剣の型を覚え、その要求を理解して、護身のための武術として攻防が出来るようにしたいという目標ができました。無駄のない、美しい自然な動きになるように稽古です。
柔よく剛を制すと言われるこの言葉は、心身のバランスが取れた時に成せる技なのです。
動静虚実の変化を知り、真実の拳法を理解できるように続けていきたいと思います。
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